


英語研修の効果を測る必要は感じているものの、
「何を評価し、どんな指標で測ればよいのか」
「テストやアンケートを、どう使い分ければよいのか」
「受講履歴やテスト結果から、研修の効果をどう判断すればよいのか」
「測る内容に応じて、測定する時期や担当者をどう決めればよいのか」
と悩む人事・研修担当者もいるのではないでしょうか。
英語研修の効果測定では、開始直後から業務での活用、組織の変化まで、すべてを測ろうとする必要はありません。到達目標と対象者の英語力、英語を使う機会を踏まえて何を評価するかを決め、指標・測定方法・時期・担当者を整理しておけば、手元の情報からでも始められます。
この記事では、「カークパトリックモデル」というフレームワークを手がかりに評価する対象を整理し、自社に合う指標・測定方法・時期・担当者の決め方を解説します。
この記事は次のような方におすすめ
新たな英語研修の導入や、継続中の研修の見直しに向け、効果測定の方法を整えたい方
受講履歴やテスト結果だけでは、研修の効果を説明しにくいと感じている方
研修事業者から提供されるデータを、効果の判断に活かしたい方
研修の継続・見直しの判断に向けて、必要な情報を把握したい方

▶︎ 目次
英語研修の効果は何を測る?カークパトリックモデルの4つの視点
英語研修では、学習が続くようになったか、必要な英語力が身についたか、仕事で使えるようになったかなど、研修目的に応じて何を評価するかが変わります。
期待する変化を整理するのに役立つのが、研修評価の代表的な枠組みである「カークパトリックモデル」です。研修の効果を、「反応」「学習」「行動」「結果」の4つのレベルに分けて捉えます。
カークパトリックモデルの4つのレベル
レベル | 評価する対象 | 英語研修での測定対象の例 |
レベル1|反応 | 研修をどう受け止めているか | 学習を妨げる要因がないか、難易度や学習量は適切か、内容が研修目的や担当業務に役立つと感じるか |
レベル2|学習 | 目指した英語力や態度が身についたか | 要点を伝える・質問に答えるなど目標とした英語力、英語で話すことへの自信 |
レベル3|行動 | 身につけた英語を仕事で使っているか | 会議での進捗説明、顧客へのその場での質問 |
レベル4|結果 | 組織として目指した変化があったか | 英語対応を任せられる社員の増加、特定の社員への業務集中の緩和 |
例えば、研修への満足度が高くても、必要な英語力が身についたとは限りません。また、英語力が伸びても、業務で使えているとは限りません。それぞれを分けて確認することで、どの変化が見られ、どこに改善や支援が必要かを考えやすくなります。
なお、研修目的や対象者、到達目標の決め方から整理したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
企業の英語研修、何から始める?企画からサービス選定・効果測定まで7ステップで解説
https://sbbiz.jp/column/corporate-english-training-guide
レベル1|反応:社員は研修をどう受け止めているか
「反応」では、受講者が研修をどう受け止めているかを確認します。学習を続けるうえで困っていることはないか、難易度や学習量は適切か、内容が研修目的や担当業務に役立つと感じるかを、アンケートや聞き取りで尋ねます。
回答は、受講時間や案内方法の調整、難易度・学習量の変更、教材や研修目的の伝え方の見直しに使えます。開始後の早い段階や研修期間の途中に確認すると、終了を待たずに改善できます。導入直後に限らず、継続中の研修でも対象者や内容に合っているかを確認します。
なお、アンケートの回答は、受講者が研修をどう受け止めているかを示します。その回答だけで、英語力の変化までは判断できません。
レベル2|学習:社員は必要な英語力を身につけたか
「学習」では、研修で目指した英語力が身についたかを確認します。話す力ならスピーキングテストや、業務場面を想定したロールプレイなどで、学んだ結果として何ができるようになったかを測ります。
「英語で話すことへの抵抗感が減った」「英語で説明できる自信がついた」といった変化は、アンケートや聞き取りによる自己評価で確認します。
レベル3|行動:社員は身につけた英語を仕事で使っているか
「行動」では、身につけた英語を実際の仕事で使っているかを確認します。「会議で担当業務の進捗を説明した」「不明点をその場で質問した」といった行動を、本人の記録や、その場面を知る上司への確認で捉えます。
なお、ロールプレイでできたことと、仕事で実行したことは別です。英語を使う機会があったかも併せて確認します。機会がない社員を「使えていない」と判断しないためです。
レベル4|結果:組織として目指した変化があったか
「結果」では、企業が研修を通じて目指した変化を確認します。売上への貢献だけに限定せず、研修の目的に合わせて決めましょう。例えば「英語対応を任せられる社員が増えた」「特定の社員への業務の集中が減った」といった変化を、人員配置や担当の記録、現場責任者への確認で捉えます。
ただし、英語対応を担う社員が増えたからといって、研修だけによる変化とは言い切れません。英語を使う案件が増え、それに合わせて担当する社員を増やしたことなども影響している可能性があります。現場責任者と、変化の背景も確認します。
4つのレベルとは別に、学習状況を確認する
4つのレベルとは別に、目標とした頻度・量で学習できているかも確認します。受講開始率、出席率、学習頻度、学習時間、レッスン数などは、その進み具合を見る指標です。学習習慣の定着や受講の継続が目標なら、その達成状況の確認にも使えます。
利用が進んでいないときは、受講を開始していないのか、途中で頻度が下がったのかを確認します。理由は、受講者へのアンケートや聞き取りで確かめます。
自社に合う効果測定の方法とタイミングを決める
自社の英語研修に当てはめるときは、次の順に決めます。
①何を評価するか → ②指標・測定方法 → ③時期・担当者
すでに研修を実施している場合も、受講履歴やテスト結果、アンケートなどから何が分かるかを点検し、必要な確認項目や測定方法を追加できます。
① 研修の到達目標から、何を評価するか決める
導入直後は、学習状況に加え、研修への受け止め方(レベル1)や、目標とした英語力(レベル2)を中心に確認する方法があります。継続中の研修では、設定した到達目標に対して、すでにどこまでできているかを踏まえます。
何を評価するかは、導入直後か継続中かに加え、次の4点も踏まえて決めます。
研修目的:学習習慣の定着、英語力の向上、業務での活用など、何を目指すか
対象者の英語力・課題:すでに何ができ、何に困っているか
研修期間・学習量:どの内容を、どれくらいの期間・量で練習できるか
英語を使う機会:学んだ英語を使う予定や、担当できる場面があるか
例えば、当面は英語を使う機会がなく、基礎的な受け答えの習得を目指す社員を主な対象とする研修なら、研修への受け止め方(レベル1)と、短い応答ができるか(レベル2)を確認します。一方、すでに英語会議に参加している社員を主な対象とする研修なら、導入直後でも、質問への返答や意見の伝達ができるか(レベル2)に加え、実際の会議で行えたか(レベル3)も確認できます。
同じ研修の受講者には、共通の指標・測定方法・採点基準を使い、業務での活用を評価する際には英語を使う機会の有無を考慮して解釈します。
何を評価するかが決まったら、研修で設定した到達目標を、測定できる項目に置き換えます。置き換え方は、次の②で例を挙げて紹介します。
評価する項目は、研修で学び、練習する内容と対応させます。例えば、会議での質問への返答や意見の伝達を評価するなら、その練習が研修に含まれているか確認します。実施中の研修で不足があれば、練習内容を調整できるか検討します。
② 評価したいことに合う指標・測定方法を選ぶ
指標は目標の達成や変化を判断するための目印、測定方法はその情報を集める手段です。「テストを受ける」とだけ決める前に、何が確認できれば研修目的に近づいたと言えるかを具体化します。
例えば「質問に返答し、自分の意見を伝えられる」を目指すなら、「質問に合う回答ができるか」「意見の要点を伝えられるか」を評価項目にし、共通基準で採点した結果を指標にします。測定方法は、質問への返答と意見の伝達を行うロールプレイです。業務での活用も評価する場合は、本人の記録や上司への確認を組み合わせます。
アンケートやテストなど測定方法ごとに、確認できることは異なります。下表を参考に、評価したいことに合う方法を選びましょう。「この方法だけでは判断できないこと」も評価したい場合は、別の測定方法を組み合わせます。
評価したいこと | 測定方法 | この方法で確認できること | この方法だけでは判断できないこと |
学習状況 | 受講・学習履歴 | 目標とした頻度・量で学習できているか | 英語力の向上、業務での活用 |
研修への受け止め方(レベル1)、自信・態度(レベル2) | アンケート・聞き取り | 学習の困りごと、難易度・学習量、内容の関連性、話すことへの自信 | 英語力の習得(自信と実力は別に確認) |
英語力の習得(レベル2) | テスト・レベルチェック | 測定対象の英語力の水準や前後の変化 | 仕事で実際に使っているか |
想定場面での説明・応答(レベル2) | ロールプレイ | 想定した業務場面での説明や応答 | 職場での実行、異なる場面での活用 |
業務での活用(レベル3) | 本人・上司への確認、業務記録 | 仕事での行動と、必要だった支援 | 観察・記録していない場面の行動 |
組織としての成果(レベル4) | 人員配置・担当の記録、現場責任者への確認 | 英語対応を担える体制の変化 | 確認した変化が、どこまで研修によるものか |
アンケートでは、例えば「学習を続けるうえで困ったことは何か」「難易度や学習量は適切か」「内容は研修目的や担当業務に役立つか」と尋ねます。テスト・レベルチェックは、相手の発言を理解する力を伸ばしたいなら聞く力を、質問への返答や意見を伝える力を伸ばしたいなら話す力を測れるか確認します。
ロールプレイを採用する場合は、誰が評価できるか、共通基準で採点できるかを事前に確認します。「要点の伝達」「質問に合う回答」などの評価項目を決め、採点例を評価者間で共有すると、評価者による差を抑えられます。上司に確認する場合も、「英語力が上がったか」という印象ではなく、「対象の会議で質問に答えたか、自分の意見を述べたか」「同僚の支援が必要だったか」と、観察できる行動を指定します。
測定方法を選んだら、受講・学習履歴やテスト結果など、必要な情報を研修事業者から取得できるか確認します。不足する情報があれば、受講者・上司への確認や業務記録など、自社で集める方法を決めます。サービスの比較・選定では、取得できるデータと、追加の測定にかかる工数も確認しておくとよいでしょう。
研修前後で比べる場合は、同じ社員を、同じ条件の測定で比べます。テストやロールプレイなら測る力・難易度・評価基準を、上司への確認なら尋ねる行動をそろえましょう。測定方法を変える場合は比較できるかを確認し、比較できなければ新しい測定を次回の起点にします。
③ 効果測定のタイミングと担当者を決める
測定する時期は、何を評価し、結果を何に使うかに合わせて決めます。到達目標、対象者の英語力や学習上の課題、研修期間・学習量、英語を使う機会、測定方法によって、変化を捉えられる時期は異なります。
以下を目安に、測定するタイミングを決めましょう。
開始前:現在の英語力を記録し、比較の起点を残す。業務での活用も評価する場合は、目標とする説明や応答を、開始前にどの程度行えているかも記録する
開始後の早い段階:受講開始や利用時のつまずきを確認し、案内や学習環境を調整する
研修期間の途中:目標とした頻度・量で学習できているか、難易度は適切か、学習内容が到達目標に合っているかを確認し、運用や内容を改善する
終了時:目的に合うテストやロールプレイで英語力の到達状況を確認し、今後の練習内容を考える
英語を使う機会の後:会議や顧客対応での行動と、必要だった支援を確認する。期間中に機会があれば、終了を待つ必要はない
開始前の測定がない場合は、現在の到達状況を確認し、次回との比較の起点にします。現在の結果だけで、過去の伸び幅まで説明できるわけではありません。
情報を取得・評価する担当者は、集める情報に合わせて決めます。受講履歴・アンケートは研修担当者が取りまとめます。テストは結果を取得・確認する人を、ロールプレイは研修講師など共通基準で採点できる人を決めます。採点できる人がいない場合は、到達目標に対応する力を測れるテストの利用を検討します。業務での活用は、本人やその場面を知る上司に確認する方法が考えられます。組織としての成果を評価する場合は、現場責任者とも確認内容を共有します。
上司や現場に確認を依頼する場合は、確認する行動、記録・回答の方法、提出時期を事前に決め、無理なく協力できるかをすり合わせます。
下表は「英語で質問に返答し、自分の意見を伝えられる」を到達目標とする研修の架空の計画例です。自社の目的や確認できる体制に合わせて、取り入れられる項目を選んでください。
効果測定の計画例|英語で質問に返答し、自分の意見を伝えられる状態を目指す研修
確認する対象 | 指標 | 測定方法 | 測定時期 | 担当者 | 比較・解釈の注意点 |
学習状況 | 学習回数・時間 | 受講履歴 | 研修期間の途中に定期確認 | 研修担当者 | 目標とした学習量と照合。英語力は別に確認 |
研修への受け止め方(レベル1) | 学習の困りごと・難易度・内容の関連性の回答 | アンケート | 開始後の早い段階・研修期間の途中 | 研修担当者 | 同じ設問で確認し、内容や運用を調整 |
質問への返答・意見の伝達(レベル2) | 共通基準での採点結果 | 質問への返答と意見の伝達のロールプレイ | 開始前・終了時 | 研修講師など、英語での応答を共通基準で採点できる人 | 難易度・準備時間・採点基準をそろえる |
業務での活用も評価する場合は、確認する行動と英語を使う機会に合わせて項目を追加します。
研修期間中の状況を確認し、運用を調整する進め方は、以下の記事でも紹介しています。
企業の英語研修、何から始める?企画からサービス選定・効果測定まで7ステップで解説
https://sbbiz.jp/column/corporate-english-training-guide

また、測定結果を踏まえた英語研修の見直し方は、以下の記事をご覧ください。
英語研修はなぜ効果が出ない?「続かない・話せない・仕事で使えない」よくある課題の見直し方
https://sbbiz.jp/column/english-training-effectiveness
まとめ|到達目標への進捗を測り、次の研修判断につなげる
英語研修では、学習の積み重ねと英語を使う機会を通じて、目標とする英語力や業務での活用を育てていきます。効果測定で大切なのは、到達目標に向けて何が進み、どこに支援が必要かを把握することです。
まずは、この記事の測定方法や計画例を参考に、到達目標に合う指標・測定方法・時期・担当者を整理してみてください。すべてを一度に測ろうとせず、自社で実施できる範囲から始めましょう。

参考情報
参考:Kirkpatrick Partners「The Kirkpatrick Model」
参考:Kirkpatrick Partners「The New World Kirkpatrick Model」(PDF)
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